扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「アリスちゃん?」



「っっ」



(どうしたら離してくれるの?)



「お願いだから離して」



「じゃあ、理由教えてくれる?」



「えっ」



(理由言ってたら離してくれるのかな)



「アリスちゃん、言わないとまたするよ?」



「!?」



(また?またされるの?)



だって、そもそも初めてのキスだって蒼兎くんに奪われているんだけど。



「アリスちゃん〜?」



「ちょっちょっと!」



蒼兎くんは躊躇なく近付き、既に至近距離だった顔の距離が更に近寄る。



「まっまってー!?
わ、わかったからっ言うからいうから!」



そう言いながら蒼兎くんの口部分を手で抑え押した。



「はあ…は」



「そう、じゃあ言って」



「っ!?」



(今、指舐めた!!)



蒼兎くんってこんなに手の早い人なの?



最初の優しかった蒼兎くんの印象と打って変わって、遊ばれてるというか弄られているというか、なんというか。



そもそも私は男の子との至近距離や触れらる事に慣れていないから、急にされると本当に困る。



「……あ、あの」



「うん?」



「この手は何?」



離してくれたのはいいけど、なぜか手を握られた状態なのはなぜだろう。



「だって、また逃げられたら困るし」



まだ、逃げたりされると思われているんだ。



さすがにもう逃げたりはしないけど。



信用されていないんだ。



(まあ、しょうがないのかな。でも…)



ずっと手を握られているのは正直困る。



「あ、あの、手離してほしいんだけど」



「なんで?」



「だって、その困るから…」



「…ふう、分かったよ。
じゃあ、ベンチに座って話そう。おいで」



「う、うん」



そう促されて先に彼は本を置いたベンチに腰を掛けた。



私も同じように1人分座れる間を空けて座った。



すると、蒼兎くんは少し気に食わないのかポンポンと隣に座ってというばかりにベンチを軽く叩いた。



「……」



「アリスちゃん、おいで」



「はい…」



言われるがままに隣に腰を掛けると、蒼兎くんは嬉しそうな表情を洩らした。



「……」



正直言って、蒼兎くんは苦手かもしれない。



なんかスキンシップの度が過ぎるから。



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