扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「なんで、迎えに来たの?
来なくていいって言ったのに!」



「……そんなに怒らなくても」



あの部屋に向かいながら私は蒼兎くんに文句を言っていた。



「怒るよ!私言ったのに来なくていいって!
今日はちゃんと行くつもりだったからっ」



「だったらそう言えばよかったのに」



「言ったよ!
けど、蒼兎くん信じてくれてなかったじゃない」



「うん、信じてない」



「もうっ」



蒼兎くんのせいで変な注目を浴びたのは言うまでもない。



「蒼兎くんのせいで変な噂立つじゃないの」



「別によくない?単に迎えに来ただけだし」



「それがダメなの!
蒼兎くんと知り合いってだけで良くないのっ」



「なんか理不尽なんだけど。アリスちゃんはもう少し自信持った方がいいよ。気にしたってしょうがないんだからさ」



「っ」



蒼兎くんは気軽なく言ってくるが、私からすればカチンとなってしまった。



「もう、私は蒼兎くんみたいな目立つような人にはわかんないんだよ! 私は目立ちたくないのっ」



「………」



別に言い合いしたい訳じゃない。



ただ、あまりにも……。



「あっ望杏ちゃんだ。
やっと来てくれる気起こしたんだね、よかった♪」



「あ、音仲くん」



「あれ、降りないの? スイッチも押してないけど」



「うん?ああ、降りるよ」



そう言うと蒼兎くんは、スイッチがある壁を押すとくまのぬいぐるみが現れる。



目玉と心臓が飛び出てて赤色の付いた包帯が足と手に巻かれた不気味なくまのぬいぐるみ。



(またあのぬいぐるみ)



「アリスちゃんそこに立ってると落ちるよ」



「へっ?」



蒼兎くんが忠告した直後、ぱかっと音が聞こえると同時に私の体がすっと消えたのだった。


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