扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
本を返した後、少し本を見ようと思って図書館内を歩き始めた。



とは言っても、基本的には同じ本しか置いていないので変わり映えはしないのだが。



(あれ? 新しいのが入ってる)



この学校には珍しく単行本の漫画や小説が少しだけ置いてある。



ただ、一部のジャンルに固定されているので生徒によっては興味を持たない人と持つ人とで分かれる。



ファンタジーで童話をモチーフの物が多く並んでいる傾向がある。



私は童話が好きなのでよく読んだりしているが。



図書館内を回っていると、物語コーナーである文庫本を見つけた。



そのタイトルが少し気になった。



(この本、新しく入った本かな?)



なぜならその本は―。



「その本が気になる?」



「!」



「えっ」



その本に手を伸ばそうとしたその時、後ろから声を掛けられ、振り向くとカウンターにいたあの男の子が微笑みながら近付いてきたのだった。



(甘い匂いがする)



彼が近づいたと同時にふわっと優しい甘みのある香りが漂ってきた。



なんだろう、この香り。



すごく落ち着く感じがする。



「あの…これ」



妙にドキドキする感じがしたけど、気にしないようにしてあえてこの本に向けた。



「アリス…ですよね?」



気になった本のタイトルには【アリス】の文字が入っていた。



もしかして、あのアリスをモチーフをしたものなのかと疑問に思ってしまった。



「うん、そうだよ」



(やっぱり、アリスなんだ)



でも、なんで絵本じゃなくて文庫本にアリスの本があるのだろう。



単行本の漫画や小説なら分かるけど、文庫本のアリスの本があるなんて私は知らなかった。



内容はアリスと似て非なるものだろうか。



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