扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「ねえ」



「! えっ…」



ふわっとまた優しい甘い香りが漂ってきて、そのまま至近距離に近付かれ本棚に背をする。



(ち、近い…!)



突然の事に、あまりにも近さと彼のお人形のような綺麗過ぎる顔が目の前に広がり、高鳴る胸が鳴り響く。



「あ、あの…っ」



どうしたらいいのかパクパクと金魚のように口を開けたり閉めたりという仕草になる。



「君、アリスは好き?」



「えっ」



近過ぎる距離に大きく高鳴っている私の心をよそに彼は続けるように私に聞いてくる。



「好き?」



(声までも透明感がある…)



「あの、えっと」



なぜこんなにも高鳴るのか分からないけどとりあえず、目をつぶりコクコクと首を上下に振って意思を示した。



「⋯そっか」



するとぴとっと頬に触れる感覚を感じた。



「っ」



その瞬間、更にびくっと肩を竦ませ、ようやくして体が動いた。



「あっあの⋯近いです!」



そうはっきり伝えながら近付かれている彼の体を少し強めに押した。



「⋯⋯⋯」



私の行動に彼はなぜかびっくりした様子で、目をぱちくりとなっていた。



「っ…」



「ああ、ごめん」



そう軽く謝りニコッと笑顔を向けてきた。



笑うとお花が咲いたかのような可愛い表情があらわれた。



「っ」



きっと近付かれたから高鳴っているだけで決して意味はない。



それはきっと、彼があまりにも綺麗すぎるからだ。


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