Contract marriage ―契約結婚

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その日の夜…何度か…寝返りをうち…なかなか寝付けないでいた…

寝付けないでいたのは、慣れないベット…のせいだけではない…

夕食にも、結婚相手であるはずの紘一と顔を合わせることはなく…広いダイニングルームで、1人で食事をとることとなった…

吉澤以外に、何人かのメイドも紹介されたが…誰1人として覚えられなかった…


昼間の、椎堂 紘一とのキスが何度も…何度も…脳裏を駆け巡っていた…


「……っ」
《やっぱり…

ありえないゎ…、

いくら、結婚すると言っても…、夫婦になると言っても…

初対面で…あんなことする人…

挨拶も…、何も無く…いきなり…っ！》


それと、悠夏の脳裏に焼き付いて…離れない人…

「……」
《それと…
無表情に近いけれど…、優しい眼差しをくれる…人…

吉澤さん…

あ…、やだ…、結婚するのよ？
私、あの椎堂さんと…、なんで、執事さんに…ときめくのよ？》



その時…、ドアが開けられる音がし、跳ね起きる…

暗がりであったが…誰かが近づいてくることが分かった…

「誰？ 誰か…っ！」

人を呼ぼう…とした時、口元を塞がれ…ベットの上に押し倒された…

「お前は、夫の帰りも待てないのか？」

そぅ、耳元で言われ…全身を強ばらせた…

すぐに、手を緩められた…。
悠夏は、その声に聞き覚えがあった…

暗がりであったが…数センチの所に紘一の顔があり、漏れる息遣いでアルコールの匂いがした…

「し…椎堂さん…。酔ってるんですか？」

抱き寄せられたが…、身体は強ばらせたまま…無意識に拒絶していた…

「あの…、私たち、まだ…」

結婚していない…と、言いかけた時…

「どの道…、結婚するんだから…いいだろ？」

…と、両手を捕まれ…何一つ抵抗出来ないまま…唇が塞がれた…

唇を割って、滑り込む舌先に、嫌悪感が増す…

両腕に力を込め…、跳ね除けようとしても叶わない…

それどころか…、その手を捕まれ…

唇から吐息が漏れた…

絡みつく舌先に、意識が遠のきそうになる…


悠夏の視線には、紘一の身体の奥…部屋のドア近くに人影を見つけた…