Contract marriage ―契約結婚

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「とてもお綺麗ですょ〜」

と、ニコニコと営業スマイルを浮かべるウェディングサロンの女性店員…

鏡の前に映った自分…、いま、流行りの刺繍やレースをあしらった真っ白なドレスに、髪もセットしてもらったが…自分ではないようで、違和感ばかり…

「吉澤さん…、」

サロンの待合室にいるはずの吉澤に見てもらうことにした…

「はい、何か…」

天井まで届く何重ものカーテンを開け、中を覗き込む吉澤…

「どうでしょうか？ 自分では、よく分からなくて…」

その、悠夏の姿を目の当たりにした彼は、微かに表情を変えた…

「綺麗です。とても…」

言葉少な…に、そう答えた…

「あら、ホントにステキ〜」

と、次の瞬間
吉澤の後ろから、現れた女性…

体の線がくっきりと出ているスーツを着こなし、髪はウェーブがかかっている…

微かに、香水の良い香りを漂わせている…

「吉澤ったら、見とれちゃって。もっと、上手く言えないの？
私が見立てたドレス、こんなにピッタリだったなんて。モトがいいからよね？ きっと…」

と、早口で言ってのけた…

「…み、雅さま。そんな事は…」

珍しく、動揺している吉澤に、笑顔を浮かべる女性

「……」
《えっ？ 誰？ 妙に、親しげ…だけど。

彼女っ？

いゃ、年上だけど…30代後半くらいかなっ？》


2人に目を奪われた悠夏の視線に気づいた…その女性は…

「あ、初めまして。」

悠夏に、名刺を差し出した…

その、名刺を受け取った悠夏…、そこに書かれていたのは、このウェディングサロンのオーナーだということと、その名前に…驚きが隠せない…

「えっ？ 椎堂 雅…って。」

「お会いするのは、初めてよね？
私、椎堂 佑一朗の…奥さんで。紘一さんのお母さん」

「えっ？」
《わ…若いっ！ 30代にしか見えないんだけど…》


思わず…、言葉を失った悠夏に…ぷっと吹き出した雅は…

「あ、産んではないけどね？ 私、後妻だから…」