Contract marriage ―契約結婚
「それは、紘一さまが。」

と、ため息混じり…に、答えた吉澤…

「…どうして…? なんで、そんな勝手なこと…」

悠夏は、予想はしていたことだが…、感情が追いつかず…珍しく声を荒らげた…

「…椎堂家の奥さまになる以上、大学に行く必要はないという判断でしょう。」

その、冷静さを装った吉澤の言葉に、一気に涙が溢れ…こぼれ落ちた…

吉澤は、それまで悠夏に渡そうか…迷っていた封筒を悠夏に差し出した…悠夏の通っていた大学の名前が印字してある封筒…

その封を切り、中の便箋を広げる…

退学届けを受理した…という内容だった…

「…どうして、勝手にこんなこと…。
紘一さんが、勝手に退学届けを出したというの?」
《勝手に、こんなことをするような人を…どうして、信じようと思ったのか…?》

悠夏の質問に、吉澤は何も言わない…

その、沈黙…に、悠夏は、《やはり、紘一さんが…》と、悟った…


踵を返し…、吉澤に背を向けた悠夏…

「悠夏さま…っ」

「1人にしてください。少し…考えたいことが…」

震える声で、そう言っていた…

「分かりました。何かありましたら…呼んでください」

…と、部屋を出て行った吉澤…


堪えていた…涙がボロボロとこぼれだしていた…

「……」
《どうして…っ?

私は、あの人を受け入れなければならないの?》



その場に、倒れ込むかのように…崩れ落ちた…


「……」
《あんな人に、身体を赦して…何をやってるんだろう…?

やっぱり、結婚はムリ…っ!


私が、あの人と結婚をせずに、お父さまの会社を建て直すこと、出来るのかな?

いったい、どうすれば?》








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