Contract marriage ―契約結婚
♪.:*:'゜☆.:*:'゜♪.:*:'゜☆.:*:・'゜♪.:*:・'゜☆.:*:・'゜♪.:*:

その日の、夜…出張先から帰宅した紘一…

「紘一さん、お話があります」

紘一の書斎に現れた悠夏…

いつにも増して…、緊迫感を含んだ声に…紘一は、何となく…の予想はついていた…

「なんだ、改まって…」

スーツのネクタイを緩めながら…めんどくさそうに答えた…

「悪いが…、疲れてるんだ。話なら明日に…」

と、言いかけた紘一に、悠夏は、紘一に大学から届いた退学届け受理の通知を見せる…

「どういうことですか? これは?」

目の前に突きつけられた通知で、悠夏の機嫌が悪い原因がなんなのか…悟ったように紘一は、納得した…

「なんだ、そんなことか」

「そんなこと…? どうして、勝手なことを…?
私は、結婚のために大学を辞めるつもりはありません!」

怒り心頭…の悠夏に引き換え…紘一は、冷ややかな視線を向ける…

「…わめくな。頭に響く。女は、大したことでもないのにヒステリックになる」

その言葉が、なお一層、怒りに拍車をかけた…

「誰がそうさせてるんですか?
大したことじゃない? あなたにとって大したことでなくても…私にとっては、大切なことです!」

冷静に…、話し合おう…としていたのに…これでは、話にならない…と、悠夏が思いかけたとき…


「…っもう…、あなたとは結婚できません…っ!
こんな勝手なことをするような人とは…っ!」

「……」

なおも冷ややかな視線を向ける紘一は、一瞬、鼻先で笑ってみせた…

「…で…? お前は、俺との結婚を破談にして、お前の父親の会社と、その社員をどうするつもりだ?」

悠夏の呼吸は、心拍数もあがり…息もしづらくなっていた…

「それは、私が…なんとか…っ」

「なる訳ないだろ? 自己破産するしか、道はないぞっ?」

「そんな…! 他になにかいい方法があるはずです」

「…何か…っ? なに、甘いこと言ってんだよ?
じゃぁ、お前の親父が自殺でもして…その保険金で負債の、穴埋めでもしてもらおうか?」

紘一の言葉に、泣かずにいよう…と、決めていたモノが一気に崩れた…

「…どうして…そんな酷いこと…っ!
あなたには、人の心がないの?」

悠夏の言葉に、紘一は吹き出しながら…

「そんなモノ、何の役に立つ?
この、結婚だって…お前の父親の会社を買収し、融資する…その代わりに、お前を貰ったようなモノだ。」

「…そんな…こと…っ」

「知らなかったのか?
お前は、人質みたいなモンだよ…。」

紘一の言葉に、言葉を失い…両の瞳から、涙がポロポロと吹きこぼれる…


「……っ」
《もぅ…、ダメだ。。

この人と分かり合えることは無い…》

< 27 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop