Contract marriage ―契約結婚

「悠夏…、俺を受け入れるんだ…」

その、口付けと…その言葉に、悠夏は、紘一の方を潤んだ瞳で見上げる…

「…っ！ 」
《どうして、こんな酷いことをしているのに…


この人の口付けは、優しいの…っ？》



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いつの間にか…、気を失っていた…

意識を取り戻し…、瞼を開けたとき…

悠夏は、寝室のベットの上に横になっていた…

薄暗い部屋の中…、身体中、痛みがあったが…何とか、上半身を起こした…

部屋の中に、誰かがいることに気がついた…

「気が付かれたしたか？ 大丈夫ですか？ 悠夏さまっ」

その声で…、誰だか分かった…

「…吉澤さん…っ」

シーツにはくるまっていたが…、衣類は身につけていない…

胸元には、紘一が遺した跡がいくつも残されていた…

その跡に、先程のことが事実…だと云われているようだった…

次第に…、涙が溢れ出し…頬を伝う…

吉澤は、悠夏の近くまで来て、膝まづき…

「お身体は、大丈夫ですか？ いま、入浴の用意を…」

「……っ」
《見られていた…、紘一さんに抱かれているとこ…

見られたくない人に…》


悠夏は、首を左右に振り…

「…ごめんなさい…大丈夫ですから。あんなの、イヤですよね？」

次々…と、涙が溢れ…止まらない…

吉澤は、小さく首を左右に振り…

「悠夏さまは、何一つ悪くありません」

悠夏の両手首に微かなアザが残ってしまっていた…。吉澤ほ、その手を取り…擦りながら…

「悠夏さまは、心も身体も、綺麗です」

「……」
《綺麗？

こんなに、穢れているのにっ？

好きでもない…
紘一さんに、抱かれるしかないのに…》


「吉澤さん、お願いがあります
手を握っていてください…」

悠夏の言葉に、吉澤は頷き…

横になった悠夏の手を、ずっと握りしめていた…


「…ありがとう…っ」
《私は、この人のことが好きなのだ…

それは、一生、口にしては行けない…

ただ、この温もりを感じられれば…それで…


私には、あの恐ろしい人に逆らうことなど出来ない…と、気がついてしまった…》