Contract marriage ―契約結婚

紘一が出かけたあと…

悠夏は、すぐ様、自室へと向かった…

ベット近くまで行き、ひざまずいて…胸元を押さえる…

上手く…呼吸が出来ない…

大きく肩を上下させ…、深呼吸を繰り返した…

「…悠夏さま…？」

その部屋のドアの方から、吉澤の声がし…振り返る

「…あ。ごめなさい…。
どうしても…昨夜のことが…っ」
《どうして？ 紘一さんは、何も無かったような対応が出来るの？

あんな…酷いことをしておいて…っ！》


部屋のドアを閉めた吉澤…

泣きそうになっている悠夏の目の前に来て、同じようにひざまずく…

悠夏の手を取り、その手を握り締める…

「私が、傍にいます
ずっと…
お1人では有りませんから…」

少しずつ…、胸の中が暖かくなってくるのを感じた…

悠夏の両目から涙が吹きこぼれる…

「吉澤さん…！」

自分から、その胸に飛び込んでいた…


いけないこと…と、分かっていても…

その、優しさに…触れずには居られなかった…

「本当に、傍に…？」

その悠夏の問いかけに、吉澤は頷き返しながら…

「はい。そばに居ます。」

その、言葉に…

次第に、胸のあたりが暖かくなっていっているのを感じた…


「ありがとう。」
《私には、味方がいる…

けして、口には出来ないけれど…好きな人が…


あの人を欺こうが…、この人がいなかったら、

また、あんなコトがあったら…耐えられない…っ！》


「…側にいてください…っ」