Contract marriage ―契約結婚

「もしかして…って、思うけど。
悠夏ちゃん、吉澤と何かあった？」

女の勘は、鋭い…と、言わんばかり…の雅の言葉に、悠夏は微かに動揺を隠せなかった…

「やっぱり、急に慌てて、そぅ言うんだもん」

何かを悟ったかのような…雅は、悠夏の両肩に手を置き…

「それがホントなら、まず忠告。」

雅は、悠夏の瞳をまっすぐに見つめ…

「悪いこと、言わない。止めなさい。」

「雅さん…」

「私も、人の事は言える立場じゃないけど。
でも、あなたの身のため。吉澤のことを思うなら…紘一さんを裏切るようなことはしちゃいけない。」

「……裏切る…なんて、私…」

「そんなつもりないなら、自分の気持ちだけで納めて置いた方が賢明
2人を追い詰める事になりかねないから」

「……っ」
《確かに…そぅだ…

気持ちを隠して、紘一さんと結婚をする事を決めた…

あの2人の関係がなんだろうと…
隠し続ける…って、決めたのだから…


気持ちを隠して…、それで上手くいく…っ？

本当に……っ？》


「よかった。じゃ、私、行くわね。悠夏ちゃんの可愛い双子ちゃんと話をしてみたいし」

と、笑顔を浮かべ…、雅は出て行った…



放心状態…に、陥った悠夏…

控え室のドアが開いたのにも気が付かなかった…

ふ…っと、目をやると…鏡に映った…その人の姿に、即座に腰を上げていた…

「吉澤さん…」

綺麗な花束を手にした吉澤は、その花束を悠夏に手渡し…