Contract marriage ―契約結婚
「おめでとうございます。」

そぅ、いつもと変わらない笑みを浮かべる…

悠夏は、その花束を受け取り…

「…兄弟のように? 紘一さんと…?…椎堂家で育ったと雅さんから伺いました。」

「…悠夏さま…、あの…」

「兄弟のように…って、何故、あの人はあなたにあんな対応を取るんですか?」

「……っ」

無言になってしまった吉澤に、ため息をついた悠夏…


「私は、あなたへの想いを隠して。紘一さんと結婚することを決めました。
それは、あなたが、紘一さんに逆らったら…どんな酷い目に遭うか…見たくないから。
でも…、そんなのは、言い訳でしかない…っ!
私は、自分の、エゴの為に…」

途中から、泣きだしそうになっている悠夏…

「私は、自分の身は守りたい。あなたを守るとか…それは、言い訳。
紘一さんの機嫌を損ねたくない…。怖いんです…あの人が…
平穏を保つためには、自分の身を守るには…それしか…」


吉澤の視線から逃げるように背を向けた悠夏…

「それでいいんです。それで…
それでも、私があなたを好きでいることを、赦してください…」

吉澤は、背中を向けた悠夏の身体を抱き締めていた…

「あなたは、紘一さまと幸せになってください。」

「…吉澤さん…」


その、2人の様子を、覗き見していた人物がいたことに、2人は知らなかった…
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