Contract marriage ―契約結婚

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その翌日の朝、屋敷の前に1台の車が止まった…

悠夏の嫁ぎ先…椎堂家からだった…

「おはようございます。椎堂家よりまいりました。悠夏さま付きの執事兼ボディガードの吉澤です」

…と、漆黒の燕尾服を身につけた長身の男性…

悠夏に、一礼し…車のドアを開けた。


その、吉澤を見るなり…
一瞬、胸の鼓動が早鐘を打つような衝撃を受けた…

悠夏と視線がぶつかる…と、吉澤はにこっ…と、笑みを浮かべた…

その、笑顔に微かに頬が紅潮していくのを感じた…

「…あ、ありがとうございます。よろしくお願いします。美崎 悠夏です。」
《なんて…綺麗な人…

いゃ、男の人に…それは、可笑しいゎ…》


と、脳裏に浮かんだ言葉を打ち消した…


自己紹介をしだした悠夏に…吉澤は微かに微笑んでみせた。

「存じております。さ、どうぞ」

後部座席のドアを開け、座席に促す…


車に乗った悠夏に、涙を浮かべながら見送る妹たち…

軽く手を振り…、同じように見送っていた父親と森さんに頭を下げた…

「可愛いらしい妹さん達ですね」

と、悠夏の妹たちに視線を向け、そう言った吉澤…

「えぇ、歳が離れているので…。可愛いくて…
吉澤さん、ご兄弟は？」

妹たちのことを言われ…、悠夏は、嬉しかった。

自慢の妹たちなのだ…

が、何気なく言った悠夏の言葉に、吉澤は、一瞬間を置き…

「いぇ、私には兄弟はいません」

そぅ、何故か寂しそうに言った…

「そぅ…、ですか…」
《なんだろ？ いまの違和感。。

いないなら、なんでそんな寂しそうに言うの？》


と、少しの疑問を感じながらも…、吉澤が運転する車は走り出していた…