Contract marriage ―契約結婚
「…本気で…言ってるんですか…?」
《そんなこと…本気で、言っているの?

私は、どうしたら…?

このまま…、別れるなんて…っ!》

冷たい…冷めた目つきを向ける紘一…

その瞳に、涙がポロポロと溢れ出し…、上手く言葉にならない…

本当は、このまま…別れるなんて出来ない…と、本心から思った…

結婚してから…、優しく接してくれるようになってきた…と、思っていたのに…


「私が…、父の会社のために結婚したと…?」


「実際、そうだろ? 俺は、こんな詮索するような女は必要ない。」

「…そんな…っ。
私がいつ、詮索しました?
あの、アルバムだって…偶然見つけただけなのに…!
そんなこと、言うのなら…私を、あなたと結婚する前に戻してください!
私は、あなたのことだって…っ」
《なんか、だんだん…気持ち悪くなってきた…

目の前が…っ。

それに…、お腹…痛い…っ!》


そぅ…、言いかけた時に…

悠夏の目の前が、くるくる回る…

急に、目眩がして…立っているのもやっとだった…


口元を押さえ…、足元からバランスを崩した悠夏…

すーっと、意識を失い、その場に倒れた悠夏…

その物音で、紘一は、悠夏の方を振り返った…

絨毯の上に倒れ…、意識を失っている悠夏を抱き抱えた…

「悠夏…っ!」

「……っ」
《遠くで…声が聴こえた…

私は、伝えたかった。。

【あなたのことも、大切な人だと…】


伝えなければ…、

いつの間にか…、必要な人になっていた…と。。》


♪.:*:'゜☆.:*:'゜♪.:*:'゜☆.:*:・'゜♪.:*:・'゜☆.:*:・'゜♪.:*:

専属の医師の診察を受けることになった悠夏…

意識を取り戻した悠夏の瞳に、見覚えのある天井が見え…、身体を起こした…

「あれ?」

先ほど、起こったことを反芻する…


あぁ、また…言い争い…してしまってた…と、思ったとき…


すぐ近くで、微かにいい香りがした…

「吉澤さん、」

「起こしてしまいましたか? 大丈夫ですか?」

吉澤が、ハーブティーを入れていた…

「いい香り。ありがとう…」

と、ティーカップを受け取り、香りを嗅いだ…

「倒れられたと…、大丈夫ですか?」

心配そうに顔を覗き込んだ吉澤…

そのまま、悠夏の唇にキスをした…。

そのキスを受けながら…このままでは…いけない…と、思った…

紘一の、あの言葉を聞いてから…あのまま、あの人を放って…吉澤の元にはいけない…と。。

「…吉澤さん、私…話があって…」
《伝えなければ… あのことを…》


何か、言いかけた悠夏…




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