Contract marriage ―契約結婚
「……」
《1度、手に入れてしまったら…手放せなくなってしまう…》

ため息をついた紘一…

「……」
《俺には、人の父親になるなんてことはない…

人を…、殺した人間の所になど…》



♪.:*:'゜☆.:*:'゜♪.:*:'゜☆.:*:・'゜♪.:*:・'゜☆.:*:・'゜♪.:*:


翌朝…、悠夏が目覚めると…すぐ近くに、いつも眠る時は寄り添って眠ってくれる人が側にいてくれている…と、思った…

安心するような…、大切にされているような…そんな感覚に陥っていた…

これは、いつも紘一が悠夏のことを抱きしめ、眠っているような…そんな感覚だった…

「……っ」
《紘一さん、いつの間に?

時々、こんな風に穏やかに見せてくれる時もある…


よかった…、戻ってきてくれた…》


目を擦りながら…、身体を起こす…

カーテンも、締め切られた寝室…、まだ、夜明け前だった…

「…紘一さん…?」
《夕べ、吉澤さんが側についていてくれてたけど…、いつの間にか…入れ替わっていたの?》


…と、思った…

目を凝らし、その顔つきを盗み見る…

その、次の瞬間…両目をゆっくりと開けた人物…

その人物に、心臓を鷲掴みになったかのような衝撃を受けた…


「悠夏さま…、気が付かれましたか?」

その声、その風貌に…、心臓が鷲掴みされたような…衝撃を受けた…

「…吉澤さん」
《間違い…っ?


いまの…、吉澤さん、聞いていた…?》



…が、吉澤は変わらずに悠夏の頬にキスをし…


「おはようございます」

と、笑顔を見せ、身体を起こし、カーテンを開け、部屋を出ていこうとした…


ベッドの横にあるサイドテーブルの上に、一輪挿しの薔薇が活けてあった…

「……」
《これ、眠りにつく前に、あった…?

誰が……?》


「吉澤さん、この薔薇って、あなたが?」

出ていこうとしていた吉澤を呼び止め…聞いた…

「…いぇ、これは、併設している薔薇園の薔薇ですね。」

「一輪挿しって、《星の王子さま》みたい…」

と、吹き出してしまった悠夏…




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