Contract marriage ―契約結婚

「……」

紘一に、そぅ言われ…

悠夏は、紘一が何について…なのか、しばらく経ち思い出した…

自分が妊娠していたことや、その子どもが亡くなってしまっていたこと…で、忘れかけていた…と、言っても良かった

「…あ、紘一さんが話したくないのなら…」

紘一は、シーツの上にあった悠夏の手を握り締め…

「いゃ、このタイミングで話しておかないと…いつ、話せるか分からない…」

そぅ、意を決したように…紘一は、口を開いた…


「あの写真は、俺と吉澤 匡だ。
匡は、世間的には小さな頃に身寄りが無くなって…父親が引き取った子どもとなっている」

「雅さんが、《兄弟のように育てられた》…と、言っていました」

悠夏の言葉に、頷いて見せた紘一…

「…《兄弟のように》…そうだな。そぅだったら…良かった。
吉澤 匡は、俺の腹違いの弟だから。あの写真を見て、予想はついていただろ？」

《腹違いの弟》…という言葉に、悠夏は軽く衝撃を受けた…


「……っ」
《そうだ…、確かに、そぅ思いながらも…認めたくなかったのかもしれない…

でも、納得が行く…

2人が兄弟だという事に…。。》


「俺が、6歳くらいの頃、父親が小さな男の子を連れてきた。それが吉澤だ。
吉澤の母親は、匡が1歳か2歳の時に亡くなっていた。
俺の母親も、早くに母を亡くした匡を不憫に思い、自分の子どもとして引き取った。今思えば…なんてお人好しな人だと思うが…。
実の兄弟のように育てられ…、匡も俺のことを実の兄のように慕っていた。
…が、俺は、知っていた…小学生だからな、母の子どもでは無いことは理解出来ていたし。父親が浮気し、その相手との子どもだと分かっていた。
俺は、子どもの頃から…椎堂家の後継者として育てられてきたから、自尊心もプライドも人一倍強かった。
いきなり現れた…もう1人の後継者候補を認めたくはなかった…
だから…」