Contract marriage ―契約結婚

「……」


紘一は、意を決したように…悠夏の顔を見つめ…

「影で、アイツを虐待していた…とも、言える」

「…紘一さん…っ」
《…虐待…って、いじめていた…と、言うこと…っ？》

「素直に跡を継いてくる…最初は可愛いがってきたつもりだった。
最初は、弟が出来た…と、嬉しかったよ。
が、両親の子どもではないと分かると…」


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「お兄ちゃん、待って…！ 僕も連れてって！」

小学2年生になった紘一…、匡はその時、4歳になっていた…

1、2歳で、椎堂家に引き取られた匡…、
当時、両親は、紘一に《親戚の子》と、伝えていた。
本当のことを話すのは、2人がもう少し大きくなってから…と、思っていたから。


紘一は、友達と遊ぶ約束をしていた…
何処に行こう…にも、ついてこようする…匡のことが心底煩わしかった…

その日は、椎堂家の庭で木登りをしたり…と、遊ぶ約束をしていたのだった。

「どうすんだよ、椎堂〜」

と、逃げ回るように匡のことを巻いていたが…どこまでもついてくる…

同級生に言われ…、イラついていた。

「木登りしよう。あの高さならついてこれない」

と、友人2人と、その木に登り始めた…

大きな枝の所まで来、上を見上げている匡…

「登ってこいよ、匡…」

登ってこれるはずはない…と、どこかで《来ないで欲しい》と、思った…

が、匡は、慕っている兄ような紘一の後を追おうと懸命に気によじ登っていた…

その行動に、心の中では、《わざと危険なメにあわせようとしているのに…なんて、馬鹿な奴》と、思った…それと、同時に《しつこいくらい、可愛い》と。。

「お兄ちゃ…っ」

あと、少し…で、枝までたどり着きそうになっていた匡…

小さな手を、自分に向け…差し出してくる…

紘一は、その手を引き上げようとした…その瞬間…

「…っあ…っ！」

匡の小さな身体は、宙を待った…