Contract marriage ―契約結婚

手を引っ張っりあげようとした時…

バランスを崩し…、地面に叩きつけられた…

「…匡…っ！」

「どうすんだよ、椎堂っ！」

紘一は、すぐ様、その木から降り…匡の手を引き上げようとした自分の手を見つめた…

騒ぎを聞きつけ…使用人たちが庭に駆けつける…、その中に…

「…匡っ！ 木から落ちたの？」

頭から血を流し…、意識を失っている匡に駆け寄る…女性…

「…お母さん…っ」

泣きだしそうになっている紘一…

事情を、説明しようとした時、その女性は紘一の方を睨み付け…

「紘一、あなたはお兄ちゃんでしょ？ どうして、匡に、危険な目に遭わせるの？」

「……っ」

事情を説明するのも…、謝るのも…タイミングを逃してしまっていた…

どうして…、聞いてくれないのか…？


「あれほど…、匡のことを見ていて…って、言っていたのに…」

と、悲痛な声を上げる母親…

「…弟じゃないよ。」

「…紘一…？」

「知ってるよ、みんなら言ってるよ！ 弟なんかじゃないよ！
貰われっ子なのに、なんで…お母さん、そいつのことばかり…
俺より、そいつの方が大事なんだろ？」

…と、言ってしまっていた…

言った後で、後悔した…

母の沙也加が、今にも泣きだしそうな瞳をし、紘一を見つめていた…

紘一は、その場に居づらくなり…逃げるようにその場から立ち去った…


その後、匡は、しばらく入院することになった。

頭からの傷と、腕を骨折していた…

母の沙也加が付きっきりで看病することになった。


それから、母は、自分の目が行き届く範囲で、匡と紘一を接触させないよう…気を配っていた。

匡は、紘一の母の沙也加のことを、自分の母親だと信じて疑わなかった…。何かをするにしても、母の後をついていくようになった。