Contract marriage ―契約結婚
そぅ、声を荒らげていた…

匡の身体を突き飛ばしていた…粉々になったケーキ…、匡は一瞬、呆然…としたが、泣き出していた…

その匡の泣き出してしまった声に…、キッチンから出てきた沙也加…

「匡、どうしたの?」

その、床に落ちたケーキと、泣いている匡…

その状況で、全て悟ったかのように思われた…

その次の瞬間、平手打ちが飛んできていた…

「あなたは、どうして匡のことを認めてあげないの?」

涙を浮かべる母親の顔…

初めて…、母親が紘一を手を上げていた…

「もういいよっ! お母さんは、匡だけを見てればいいよ!
俺なんて要らないんだよな?」

紘一は、泣きだしそうになりながら、それだけ言うと…椎堂家の玄関を出ていった…

「紘一、待ちなさい!」


家を飛び出し…、椎堂家の門を潜り…道路へと飛び出した…

後ろを振り返ると…、沙也加が追いかけてきていた…

母は、身体が弱いはずだった…と、あとになって思い出したのだった…

紘一は、道路を駆け走り、反対側の道路へ渡ろう…とした時…

急ブレーキの音がし、我に返った…

目の前に、車が突っ込んできそうだった…

「……っ!」

その時…、何かに突き飛ばされていた…


その瞬間の記憶ほ、意識が飛んでいた…余り覚えていない…とも、言える…

地面に叩きつけられた紘一…、そっと目を開ける…

叩きつけられた衝撃で、腕などに擦り傷で出来ていた…

その、自分の目の前に、倒れている女性の姿…


「…お母さん…っ?」

その目の前に横たわっていた人…頭や身体中けら出血し、血だらけのまま…意識を失っていた…

「…お母さん…っ!」

身体を揺さぶってみても…何の反応もなかった…


♪.:*:'゜☆.:*:'゜♪.:*:'゜☆.:*:・'゜♪.:*:・'゜☆.:*:・'゜♪.:*:

事故の後、紘一の母は緊急手術が行われた…


紘一は、いたたまれなくなり…病院の中庭の大きな気のあるベンチに座っていた…

あの後、父親の佑一朗にも叱られ…意気消沈…としていた…

父親に叱られること…は、何度かあっても、母親に殴られたことなどなかった…


それよりも…母が自分を庇い、車に轢かれたということは、自分のせいでしかない…



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