Contract marriage ―契約結婚
悠夏が、退院し…紘一は、自分のことを話すようにはなってくれていた…

身体のことも気遣ってくれ…、キス以上のことはしない…

ただ、寄り添って…側にいてくれる…


悠夏は、労わってくれているようで…心地よかったが…。。その行為が、余計…心の中に空虚感を生んでいた…


もっと…、愛して欲しい…と。。

心の隙を、埋めて欲しい…と。


「……っ」

隣りで、横たわり…規則正しい寝息を立て、腕枕をしてくれている人の寝顔を見つめる…

「……」
《紘一さん、あれから私のこと、抱こうともしない…

赤ちゃん、居なくなってしまったから…

身体のことを気遣ってくれている…のでしょうけど…

私は、何を望んでいるの…?

この人が、本当に私を愛してくれているのか…分からない…》


2人で、あの蜜のように甘い時間を過ごした日は、隙間など入らないくらい…互いしか、感じられなかったのに…

悠夏は、上半身を起こし…紘一の頬に触れた…


「……」
《もぅ少し…、必要とされたいのかな? 私は?

愛されている…と、心も身体も…、感じていたいの…》


悠夏は、ベットを抜け出し…、上着を羽織り…そっと、部屋を出ていく…


心は、以前よりも愛情を感じ…満たされているような感覚は感じる…

が、身体の方は、大丈夫だと思っているのは自分だけなのか?

紘一は、ドクターから悠夏の身体について聞いていることだろう…身体を重ねるのには、まだ身体が万全に戻ってから…という判断かもしれないが…

そういうことは、語ろうとはしてくれない…


愛されているかもしれない…と、感じながら…寂しくもあった…



部屋を出た…悠夏の視界に、見回りをしているらしい吉澤の背中が見えた…

「…っあ…」

すぐ様、踵を返し…部屋の中に戻ろう…とした…

部屋のドアを開けよう…とした…、その瞬間…

悠夏のドアノブを持つ手を掴まれた…

「……っ」

その手の主の方を見上げる…

「吉澤さん」

部屋の中で眠っている紘一を起こさないよう…小さな…消え入りそうな声を発していた…

「悠夏さま、どうかしましたか?」

が、悠夏は、すぐに吉澤から視線を逸らした…

「あ、眠れなくて…」



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