Contract marriage ―契約結婚
「吉澤と、お呼びください。」

バックミラー越しに、一瞬視線がぶつかった…

その綺麗な瞳に、再び…心臓が早鐘を打つ…

「よ…吉澤…さん。父から、椎堂家の方だとは伺っているのですが、それ以外のことは」
《吉澤さんって。
ず…随分、若いようだけど…。落ち着いてる…。

なんで…こんなに色気があるのかしら…?》


「とても…優秀な方です。」

「椎堂家は、いくつも系列の会社があって…その方の結婚相手って、私でよいのでしょうか?」

「紘一さまが選んだのがあなたなのなら間違いないでしょう」

「……そぅ…ですか…」
《名前くらいしか、知らない…なんて、どうなのよ?

愛情…、持てるのかな?

不安だ…。

いい人ならいい…、優しくて、穏やかで…

お父さまのような人なのなら…》


父の翔吾から、聞き…悠夏は、結婚相手である椎堂 紘一について、ネットなどで調べてみたが…

どれもありきたりな情報しかない…

若干 28歳で、椎堂グループの一部の社長や取締役となっている…
中学から、有名進学校に通い…海外に留学経験もある…
かと言って…勉強ばかり…のガリ勉タイプでもない…

中学時代から、バスケット部に所属し、ポイントガードを務めた…ということらしい…

どれをとっても、これ以上はない…というくらいの人物だ…


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