Contract marriage ―契約結婚
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椎堂家の使用人やメイド達が宛てがわれた部屋が並ぶ地下へと向かう…

悠夏は、地下の部屋には初めて来ていた…


「ほとんど…、ここに住む人たちはいません。通いの人たちばかりで…」

と、自室に悠夏を案内しながら吉澤は言った…

紘一や悠夏の部屋とは違い…、こじんまり…とした8畳ほどの部屋だった…机とベットに本棚がある程度の部屋…

座る場所…と、言えば…ベットの上かフローリングの床の上しかなかった…

続き部屋に、小さなキッチンもあるようで、吉澤は、悠夏に紅茶をいれ、カップを手渡した…

「椎堂家にあるような茶葉はなくて…、安物ですけど…」

そぅ、照れ臭そうに言った吉澤…

悠夏は、その紅茶を1口飲み…

「美味し…、ありがとう…」

吉澤は、悠夏の口を塞ぎ、口付けをした…

唇が離れ…、視線がぶつかる…微かに、少しずつ…心の中が満たされていくのを感じた…

「本当に、よろしいんですか?」

その瞳に、捕えられ…視線を逸らせない…

「覚悟がなければ…、ここまで来ません。
あなたを…、1人には出来ないから…」

そぅ…、精一杯…笑ってみせた…


本当は、怖くて…堪らなかった…

自分を、あれ程、必要とし大切にしてくれている…夫である紘一を裏切ろうとしているのだ…

でも…、吉澤も同じように…自分を大切にしてくれている…その、心が痛いほど分かるから…


ベットに押し倒された悠夏…

吉澤の両の頬に触れ…、真っ直ぐな瞳で見つめる…

「吉澤さん、あなたの方こそ…後悔しない?
私と…こういう関係になったら…、紘一さん…お兄さんと…」

その、悠夏の言葉の途中で、悠夏の唇に人差し指で触れる…

「覚悟は、とうに出来ています。
あなたを好きになった瞬間から…」

そぅ、微笑んだ…

その笑顔、その言葉に…、悠夏の胸が高鳴った…

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