Contract marriage ―契約結婚

「悠夏、いい？」

自分の身体を気遣うような仕草を見せる紘一…悠夏は、頷き返した…

「…ん…っ」
《この人に、気づかれる訳にはいかない…っ！

吉澤さんは、ああ言っていたけど…


そのためなら、自分の心も身体も…

周りの人間にも…気づかれる訳にはいかない…っ！


そのためなら…、自分を欺いても…》



紘一は、悠夏の首筋や胸元に愛撫を重ねていく…

「…ん…、あぁ…」

余韻が残る身体に、再び…跡が刻まれる…


紘一は、自分の腕の中で眠る悠夏の髪を撫で…

「……」
《他人に心を奪われる…ことなど

自分には、ない…と、思っていた…

人を好きになる…という感情は、脳が起こす錯覚に過ぎない…

…が、こごまで心を奪われてしまうとは…っ》


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カーテンの隙間から…、微かに日差しが降り注ぐ…

「…おはよう…」

と、その声に、悠夏はゆっくりと瞼を開けた…

「…紘一さん…」

視線を合わせ…、口付けを交わした…


紘一のまえでは、貞淑な妻を演じる…



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紘一は、今日から１週間…、沖縄へ出張だ。新規開拓事業…のリゾートホテルの開設に向けて…だ。

「悠夏、今日から沖縄だけど…」

と、朝食の珈琲を飲み、相変わらず…経済新聞から目を逸らさず…に、紘一は言った…

「あ、伺ってます。１週間…でしたよね？」

悠夏は、朝食を食べる手を止め、答えた…

「仕事、早めに切り上げるから。沖縄おいで…」

紘一の言葉に、悠夏は一瞬にして笑顔になった。

「ホントに？ いいの？」

「うん。4日で終わらせるから…。確実に終わるか分からないけど…」

途中から、悠夏に目線を合わせた紘一…

「…新婚旅行もまだだったし。仕事の合間で悪いけど…」

急に…、視線を絡ませてくる紘一に、悠夏はドキッとした…