Contract marriage ―契約結婚
「あぁ、それが、ウリだから。近くに水族館やショッピングモールもある。
悠夏が好きそうなのもあるよ。あとで行こうか?」

と、珍しく…悠夏の買い物に付き合う気でいる紘一に…

「紘一さん、買い物、嫌いなのに…。
でも、嬉しい…! 妹たちにお土産も買ってきたいし、支度してきますね!」

悠夏は、笑顔を向けながら…荷物が届けられているはずの部屋へと向かっていった…



ホテルの部屋の一室には、書斎なども設えており、紘一は、吉澤に話がある…と、書斎に迎え入れた…

部屋のドアを閉めろ…という素振りを見せる紘一…

その圧力に、気圧されそうになる…

先ほど、悠夏に見せていた表情とは違う…

相変わらず…、この腹違いの兄は、自分を1人の人間として見る気などはないようだ…

話がある…と、いうことは…
吉澤は、悠夏とのことを疑われている…と、思いつつも…証拠などないはずだ…と、不安を打ち消そうとした…

「何か…?」

そうそう…に、話を切上げ、シラを切り通せば済む…と、鷹を括っていた…


が…


紘一は、吉澤に自分のスマホを渡し…

「さっき…、知り合いが面白いモノを送ってきた…」

先ほど…、悠夏に向けた声音とは格段に違う…

恐る恐る…、そのスマホを受け取り…、映し出されている画像を目にする…

「……っ」

言葉を失う程の衝撃…

そこには、飛行機の機内で、寄り添っている自分と悠夏の画像があった…

だが、これだけでは、なんの証拠にもならないはずだ…

眠気で、悠夏が吉澤の肩にもたれかかっている…ように見て取れる…からだ。

「…なにか…、疑っているのですか?
なにもやましいことは…」

…と、いつものように…笑みを浮かべる…

ただ、隣で寄りそい、悠夏が寝てしまった…で、通そうとした…

が、紘一は、その吉澤の反応も予測出来ていた…

微かに、微笑んでいるかのように…見える…


茶色の封筒を吉澤に差し出し…

一瞬にして…、動悸が早まったのを感じた…

この兄のことだ…、何かの手を使って…自分たちのことを調べさせた…のだろう…と。
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