Contract marriage ―契約結婚
しばらく、車で走り…たどり着いた…

石壁が連なり…、鉄格子のような門が開いた…

そのまたしばらく行くと…、大きな…洋館屋敷に辿り着いた…、吉澤は、その車を玄関前に横付けさせ車のドアを吉澤が開け、屋敷の中に促された…


「……っ」

悠夏は、その屋敷の大きさに圧倒された…冷たくて、大きな古めかしい…

思わず…、ここで本当に上手くやって行けるのか?
…と、思ってしまっていた


長い紅い絨毯が引かれた廊下を歩く…置いていかれないよう…吉澤の後をついて行く悠夏…

「失礼します。お連れしました」

と、大きな天井まで届く両開きのドアの前で、そのドアをノックし、ドアを開けた吉澤…

部屋の奥の、大きな机にもたれ掛かるように腰掛けていた人…

仕立てのいい…オーダーメイドのスーツを身につけた…1人の男性がいた…

その人物に、悠夏は、一瞬ドキっとした…。

が、その圧倒的な威圧感に、たじろいた…

心臓を鷲掴みにされたかのような衝撃…とはこのことだ…

その人が、悠夏の姿を見るなり…近づいてくる…

その雰囲気…生まれながらにしてのオーラを感じた…

「あ、み…美崎 悠夏です。」

と、気迫に押されながらも挨拶をしようとした時…

悠夏の腕を掴み、自分の方に引き寄せた…


驚きのあまり…、その胸にもたれ掛かる…急に、抱きすくめられ…言葉を失った。

男の人に、抱き締められるのは、父親の翔吾以外では初めて…のことだった…

「この女が、そうなのか?」

と、悠夏の頭上で聴こえた声…

「はい、そうです。美崎さまのご息女です」

そぅ、吉澤の声が、悠夏の背中で聴こえた…

「ふーん、」

何の、興味も…関心も伺えないような声…

悠夏は、すぐ様、体勢を整えようと…身体を離そうとした瞬間…

「お前が、俺の結婚相手か。
まぁ…、俺がお前を妻にするのも…、身体を重ねるのも…契約のウチだけどな…」

「…《契約》…?」

その男の、《契約》という言葉を、繰り返し…言葉の意味が理解出来なかった…

鼻先で、吹き出し…冷ややかな笑みを浮かべる…

その次の瞬間…、顎先を引き寄せられ、唇が重なった…

「…っ!」

その次の瞬間…、もう片方の手で、その相手の頬をはたいていた…

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