ひと夏の恋をキミと
「そうか…」


と、小さく息を吐き出した後


「…ありがとう。
姫奈の事を好きになってくれて。」


そう言ったんだ。


まさかお礼を言われるなんて
思っても見なかった俺は
固まってしまった。


そんな俺をよそにおじさんは話を続けた。


「姫奈は一人娘で
私達夫婦にとってかけがえのない存在でね、
ずっと大切に育ててきた。
娘を嫁に出したくない世のお父さんたちの
気持ちも分かるんだけどね、
私は姫奈に、親以外から愛される喜びを
知ってもらいたいとずっと思ってたんだ。
そして姫奈もその人を好きになって
恋愛をしてもらいたかった。」


気のせいかもしれないけど
涙で瞳が揺れているようにも見えた。
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