ひと夏の恋をキミと
昨日までの姫奈は強く、脆く、儚かった。


あの小さく細い体で
どれだけの辛さや恐怖を受け止めたのだろう。


姫奈が苦しんでいるとき、
傍にいてやりたかった。


でも、それはもう叶わないから、
せめてこれから先の人生、
一緒に楽しい事たくさんしようよ。


明るい思い出でいっぱいにしよう。


溢れた涙が日記へ落ちたのを拭おうとした時、


…まだ書いてある?


ページをめくろうと手をかけた。


ウィーンとまた扉が開く音がして
たくさんの器具を付けられ、
眠った姫奈が出てきた。


「…姫奈!」


俺も、姫奈のお母さんもお父さんも
一斉に駆け寄る。


「…先生、姫奈は…。」
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