空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
「そんなこと、私にはとてもありがたいことですけど、本当にいいんですか?」

声が震えている。

チーフの言葉から色んな人達の優しさが溢れていたからかもしれない。

『いいにきまってる。それにね、今日届いたTUYUKUSAの絵と君の絵がまるで重なり合うみたいに似てるんだ。この二点を並べて展示したら一つの物語ができるんじゃないかってくらいに』

TUYUKUSAさんの絵と私の絵が物語を作る?

「もしかして、並べて展示して下さるんですか?」

泣きそうなほどに感動していた。

だって、並べて展示されるなんて夢のまた夢だったんだもの。

『ああ、渡瀬さんもTUYUKUSAの絵を見たらびっくりするよ。その絵のタイトルも・・・・・・あ、これは搬入する時まで楽しみにしておいてくれ』

そんなこと言われたら余計に気になると思いつつ、「はい、楽しみにしています」と答えて電話を切った。

受話器を置いてしばらく放心状態になっている私の顔を、コーヒーカップを手にした植村さんがのぞき込んだ。

「どうしたの?遠い目して」

「え?あ、だって、すごいことが起こってるから」

「一体どうしたっていうの?」

植村さんは私の横に開いてる椅子を引っ張ってきて座る。

震える胸を押さえながら、電話の内容を話した。

「へー!すごいじゃない!」

植村さんのつんざくような声が事務所内に響く。

「おいおい、植村さん、声が大きいぞ!」

パソコンに向かっていた館長が眼鏡をおでこに上げてこちらに視線を向けた。


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