空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
「和桜?」
空耳だろうか。遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
その時、暗闇からのサインがあったかのように、一気に街中の街灯が点灯する。
さっき声がした方に目を向けると、その人の姿がはっきりと私の目に飛び込んできた。驚きのあまり大きく目を見開く。
彼は道路の脇に停車している車の前でこちらに顔を向けていた。
かけていたサングラスを外すと、私の方へ歩みを速めながら近づいてくる。
その彼は。
「こちらに向かって来る人って、吉丸醍さんじゃない?」
前にいた珠紀がすぐさま反応した。
雄弥はその存在を知らないのかキョトンと首を傾げ彼の方を見ている。
「吉丸醍さんですよね?」
珠紀は私のことなんか忘れたかのように醍に釘付けになり頬を紅潮させて私の横に並んだ彼に話し掛けた。
嫌だ。
彼女にだけは話してほしくない。
またあの時みたいに。胸がきゅうっと圧迫されたような息苦しさを覚える。
だけど、醍はそんな珠紀には目もくれず私だけをじっと見つめていた。
苦しさに、溢れてくる涙をぬぐうことすらできないまま愛しいその名前を呼んでみる。
「醍」
「和桜、どうして?」
「私・・・・・・」
そう言い掛けた時。
「和桜は吉丸醍さんとお知り合いなの?」
珠紀の声が私と醍の間を引き裂くように響いた。
醍は珠紀達に一瞬顔を向けたけれど、すぐに私に視線を戻し、震える私の手を強く握り締めた。
「知り合いじゃない。和桜は俺の大切な女性だ。行こう、和桜」
全てを悟ったのか、彼は聞いたことがないくらい冷淡な口調で彼女に言い放ち、私の手を握り締めたまま車の方へ向かった。
力が抜けてよたよたと彼の後ろから着いていく私の後ろで珠紀が「うそでしょ」と呟くのが聞こえる。
空耳だろうか。遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
その時、暗闇からのサインがあったかのように、一気に街中の街灯が点灯する。
さっき声がした方に目を向けると、その人の姿がはっきりと私の目に飛び込んできた。驚きのあまり大きく目を見開く。
彼は道路の脇に停車している車の前でこちらに顔を向けていた。
かけていたサングラスを外すと、私の方へ歩みを速めながら近づいてくる。
その彼は。
「こちらに向かって来る人って、吉丸醍さんじゃない?」
前にいた珠紀がすぐさま反応した。
雄弥はその存在を知らないのかキョトンと首を傾げ彼の方を見ている。
「吉丸醍さんですよね?」
珠紀は私のことなんか忘れたかのように醍に釘付けになり頬を紅潮させて私の横に並んだ彼に話し掛けた。
嫌だ。
彼女にだけは話してほしくない。
またあの時みたいに。胸がきゅうっと圧迫されたような息苦しさを覚える。
だけど、醍はそんな珠紀には目もくれず私だけをじっと見つめていた。
苦しさに、溢れてくる涙をぬぐうことすらできないまま愛しいその名前を呼んでみる。
「醍」
「和桜、どうして?」
「私・・・・・・」
そう言い掛けた時。
「和桜は吉丸醍さんとお知り合いなの?」
珠紀の声が私と醍の間を引き裂くように響いた。
醍は珠紀達に一瞬顔を向けたけれど、すぐに私に視線を戻し、震える私の手を強く握り締めた。
「知り合いじゃない。和桜は俺の大切な女性だ。行こう、和桜」
全てを悟ったのか、彼は聞いたことがないくらい冷淡な口調で彼女に言い放ち、私の手を握り締めたまま車の方へ向かった。
力が抜けてよたよたと彼の後ろから着いていく私の後ろで珠紀が「うそでしょ」と呟くのが聞こえる。