空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
「でも、俺今すごく感動してる。そんな無謀と思えるような状況でパリに会いに来てくれた和桜に」

彼は私に覆い被さるように抱きしめた。

「ありがとう、和桜。俺はあの日から和桜を思う気持ちは何一つ変わってない」

彼の体が少し離れ、私の目を正面からまっすぐに見つめる。

「あの日、俺は振られたって思ったよ。だけど、こちらの仕事が落ち着いたらもう一度君を迎えに行くつもりだった。どうしてもあきらめきれなくてね」

そう言うと、うつむいてふっと口もとを緩める。

「でも、迎えに行くより先に和桜がこっちに来ちゃってるけどさ」

「ごめん」

私は醍の手をそっと握った。

「醍の『和桜』っていう絵を見て、あなたの気持ちが伝わってきた。何も変わってないって。それでいてもたってもいられなくなったんだ」

「会いたかったよ、ずっと」

「私も。どんなことがあったって醍のそばにいたい。例えあなたの足手まといになったとしてもね」

「いいよ、どんどん俺の足引っ張ってくれて。ちょっとやそっとじゃ俺は自分の道踏み外したりしないから」

「醍ほどの自信家にはお目にかかったことないわ」

久しぶりに二人で顔を見合わせて噴き出した。

そしてそのままゆっくりと唇を合わせる。

彼の柔らかい唇が私を何度も求めた。私も自分から何度も彼にキスをする。

「これ以上は家に帰ってから」

醍は私の頬を両手で優しく包んで微笑む。

そして、車のエンジンをかけ、再び車を走らせた。



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