空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
彼のアパートメントに着くと、すぐに背後から抱き締められる。

「嫌っていっても今日は無理だから」

そう言って彼は甘いキスを浴びせながら私の服を剥ぎ取っていった。

愛しい彼の唇、手、指が、私の体を優しくためらいがちになぞっていく。

「優しくしないで」

彼の耳元でささやくと、「じゃ覚悟して」とイジワルな表情でニヤッと笑い一気に激しさを増していった。

こんなにも愛されることに開放的な気持ちになったことはない。

きっと過去のトラウマが消えたから。

そして、真の愛に気付くことができたから。

醍の忠告通り、「もうだめ」って何度言っても「無理」と言われ、熱くて激しい愛の営みはどこまでも続いてゆく。何度も互いの名前を呼び、一つになり涙を流した。この愛には終わりがないんだと互いに刻み込むように。


カーテンの隙間から朝日が差し込み、小鳥の囀りが時々部屋に響いてくる。

ベッドに目をつむって横たわっている私の前髪をそっと直しながら尋ねた。

「眠たい?」

「ええ」

目をつむったまま答える。まどろみながら彼の声を聞いてる時間はとても贅沢だと感じながら。

「俺、全然眠くない」

「若いね」

「否定しない」

私は笑いながら彼の腕を軽く叩いた。

醍はその手をぎゅっと握ると自分の胸に私を引き寄せ、おでこに唇を押し当てる。

「幸せだよ。とても」

「私も」

そう言って彼の胸にもたれたままいつの間にか眠りに落ちていった。



< 119 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop