空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
エレベーターを待つ間、醍は明日の製作発表を迎えるまでの苦労話をしてくれた。

パリに来て、オートクチュールの専門家から知識を学び、こちらの職人達とフランスの職人達とで何日も協議し製作が始まったこと。

友禅とオートクチュールとのコラボは想像以上に難しく、お互いプライドのぶつかり合うことも多かったけれど、それ以上にいい物を作るという思いが皆に芽生え、国も文化も違うスタッフ達の気持ちが一気にまとまった瞬間に今まで味わったことがないくらいに感動したこと。

雑貨の製作も、フランス人からの知恵ももらいながら納得のいく製作ができたから早く和桜にも見て欲しいと醍は嬉しそうに言った。

そんな彼が今は誇らしく見える。

私なんて・・・・・・って思っていたあの日の私はどこにもいない。

30分ほど待っただろうか。

「ようやく俺たちの番だ」

醍が前を向き私の手を引っ張った。

エレベーターは動きだし、一気に上昇する。

さらに頂上までのエレベーターに乗り換え、昇っていった。

エレベーターの中はガラス張りで上昇するにつれて、パリの夜景が眼下に開けていく。

頂上に着くと、目の前に広がった光景に思わず「うわぁ」と声が漏れた。

日本で見るのとは違う、厳かな光が歴史ある美しい街並みに鼓動を与えている。




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