空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
翌朝、醍は私が寝ている間に会場へ向かっていた。

ベッドから起き上がり、リビングに行くとテーブルの上に私の入場チケットが置いてある。

チケットには14時開場となっていた。

そしてその横にメモ。

『タクシーは12時に迎えにくるからアパートメントの前で待ってて 醍』

14時から行われるわりにお迎えの早いこと!

時間間違えたんじゃないかと思ってしまう。

だけどとりあえず、醍が手配してくれたタクシーに乗るのが会場に向かう一番間違いのない方法だよね。

壁に掛かるアンティーク時計に目をやると10時半過ぎだった。

視線を下ろすと、壁に貼り付けるように置いてある木で出来たハンガーラックがあり、そこに光沢のあるオフホワイトのシンプルなドレスが掛かっているのに気付く。

シルクだろうか?そのドレスは窓から差し込む日の光に照らされて眩く光っている。

ハンガーにはドレスに合いそうなパールのネックレスと淡いグレーの毛皮のコートもかけられていた。

ハンガーにもメモを見つけた。

『気に入ってくれたらいいんだけど。今日着てきてほしい』

私のために?

こんな高級なドレスもコートも初めてで手に取っただけで緊張する。

っていうか、時間のない中、私のためにこんな素敵な衣装まで用意してくれていたんだ。

製作発表会には著名人がたくさん来ると聞いていた。

フランスと日本の、ファッション業界や伝統芸能業界、大手商社や服飾メーカーからも多数訪れるような場所に、さすがにジーパンでは行けないもんね。

さりげない彼の気遣いには嬉しくて涙が出そうだった。




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