空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
会館に入ると発表会が行われる地下ホールに向かう。

まだ時間が早かったけれど既に受付にはたくさんの人が押し寄せていた。

それくらい関心度の高い発表会なのだろう。

受付に立っている女性にとりあえず持って来たチケットを見せる。

もちろん彼女もフランス人。

金髪の髪がフワフワと揺れて、水色の瞳がとてもきれい。

受付の女性は私のチケットを見ると、「Just morment,prease」と言って会場の中に入って行った。 

すぐに会場の中から一人の日本人男性が出て来た。

黒いスーツをビシッと着こなし、眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の男性。年齢は私よりも少し上くらい?男性のネクタイがとても印象的で、地の色が濃いグリーン、そこに黄色やブルーの細かい幾何学的デザインが施されている。

彼は私に丁寧に頭を下げると言った。

「渡瀬和桜様ですね。お待ちしておりました。私は、吉丸醍と新規プロジェクトで共に製作に携わった森山尚人といいます。どうぞこちらへ」

「初めまして。このたびはお世話になります。って、え?」

会場に入るんじゃないの?

訳もわからず、その男性に促されるがままホールの裏側の方へ連れていかれる。

小さな扉の前で男性は止まり、その扉をノックした。

中から「はい」という女性の声がし、開いた扉の向こうに日本人女性の姿があった。

その女性は私ににっこり微笑むと「あなたが和桜さんね。さ、入って」と親しみのある丸顔で笑い私を部屋に招き入れた。

こ、これは一体どうなってるの?

部屋の中は衣装部屋だろうか?

何着かのドレスが並べられ、奥には大きな鏡がある。

「私は今日の衣装担当であなたのヘアーとメイクアップを醍から頼まれてるの」

「これは・・・・・・ど、どういうことなんでしょうか?」

「とりあえずこちらに座って」

言わるがまま鏡の前に用意された丸椅子に座る。
< 126 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop