空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
鏡に映る私が美登里さんの手によって信じられない自分に仕上がっていく。

こんなにきちっとお化粧してもらったことも初めてだったけれど、こんな自分にお目にかかったのも三十年生きてきて初めてだった。

「和桜さん、肌がきれいだからお化粧ののりがとてもいいわ。薄化粧だけど、目元と口元にインパクトを与えたら一気に華やぐお顔立ちね。和美人だからあのドレスは間違いなく似合う」

化粧を終えた美登里さんが「ほぅ」とうっとりした表情で鏡越しに見つめている。

私が和美人?

そんなこと言われたこともないけれど、鏡に映る自分はまるで自分じゃないみたいにキラキラしていた。

その後、髪をロールアップに結い上げ、ビーズをあしらった華やかな髪飾りをセットしてもらう。

「この髪飾りも醍が作ったの。友禅の技法でね」

頭の上で、チラチラと品のいいビーズが揺れる髪飾りは和洋どちらでも使えそうなデザインだった。

牡丹らしき幾重にも重なった花に、さらに花の絵が描かれている。こんな髪飾りは私も見たことがない。

そして、美登里さんにドレスを着せてもらったけれど、これもフィットサイズで、彼女も驚くほどだった。

「どこも詰める必要なさそうね。あら、もうこんな時間。早く会場に向かわなくちゃ」

美登里さんは私の肩をポンと叩いた。

お披露目会のステージに私が出ることが現実として迫ってきたので、さすがに体中が脈打ち始めた。

こんな緊張したのは久しぶりで、どうやって気持ちを落ち着ければいいのかもわからない。

醍。

せめて始まる前に醍に一目会いたい。



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