空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
指で描いた線をこすり陰影をつけていく。

少しずつ平面のゾウがその陰影によって立体化していくと、まるで一枚の絵に命が吹き込まれていくようだ。

「ここいいですか?」

突然私の斜め上から声がしたので慌てて描く手を止め、スケッチブックを守るように胸に抱いたままゆっくりと顔を上げた。

濃紺のスリムジーンズがその人の足の長さを際立たせ、ふんわりとした白シャツの前で腕を組むその腕に木漏れ日が揺れていた。

長めの前髪の間から、受けとめるには心構えが必要なくらいのまっすぐな瞳が私を見下ろす。

「横、座らせてもらいます」

彼はふっと口もとを緩めると、私の返事を待たずに少し距離を置いてベンチに腰掛けた。

肌が透き通るように白くて、どこのパーツをとってもとても品のいい美しい顔立ちの男性で、年は私よりも少し若いように感じる。

彼の奥二重の切れ長の目は私の胸に抱えられたスケッチブックに注がれていた。

こんな近くに座られたんじゃ、集中して絵が描けない。

どうしていいかわからず黙ったまま彼の顔を見つめ続ける私に彼は軽やかに笑った。

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