空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
後ろにひっつめた髪の後れ毛を慌てて直し、姿勢を正した。
「渡瀬和桜さん。僕がとりわけお世話になってる方です」
お世話なんか全くしてませんけど。
心の中で突っ込みながらも必死に笑顔を作って会釈をした。
粗相の出来ない場所ではとりわけ緊張する。
「お坊ちゃまがお世話になっているってデザイナーか専門職人さんでしょうか?」
亭主は私に満面の笑みを向けて尋ねた。
デザイナー?職人?!何のことだかわからず、首を傾げて吉丸さんの方を見た。
彼は優しく微笑み頷くと私の代わりに落ち着いた様子で言葉を続ける。
「いえ、彼女はそういった方ではありません」
「ああ、これは失礼しました。まぁ深いことは私なんぞが聞くことではありませんな。今日はお二人ゆっくりお食事を楽しんでいって下さい」
亭主は人の良さそうな顔で頭をかくと、もう一度私達に頭を下げ部屋を出て行った。
「ごめん。気を遣わせたね。亭主には予約入れた時にくれぐれも挨拶に来なくていいって断っていたのに」
「いえ、全然大丈夫」
大丈夫だけれど、さっきの会話があまりにもクエスチョンマークだらけで頭の中がまだ混乱している。
混乱しながらも、その後は次から次へと高級食材で調理された味も見た目も一流の料理が運ばれてくるので、舌鼓を打っていた。
「和桜さんは、ずっとあの美術館で働いているの?」
「ずっとではないけれど、今年でちょうど三年目」
「その前はどこか他の場所で?」
「・・・・・・ええ」
その時の話をするのも思い出すことも今はない。
フラッシュバックしそうになり、思わず箸が留まる。
「渡瀬和桜さん。僕がとりわけお世話になってる方です」
お世話なんか全くしてませんけど。
心の中で突っ込みながらも必死に笑顔を作って会釈をした。
粗相の出来ない場所ではとりわけ緊張する。
「お坊ちゃまがお世話になっているってデザイナーか専門職人さんでしょうか?」
亭主は私に満面の笑みを向けて尋ねた。
デザイナー?職人?!何のことだかわからず、首を傾げて吉丸さんの方を見た。
彼は優しく微笑み頷くと私の代わりに落ち着いた様子で言葉を続ける。
「いえ、彼女はそういった方ではありません」
「ああ、これは失礼しました。まぁ深いことは私なんぞが聞くことではありませんな。今日はお二人ゆっくりお食事を楽しんでいって下さい」
亭主は人の良さそうな顔で頭をかくと、もう一度私達に頭を下げ部屋を出て行った。
「ごめん。気を遣わせたね。亭主には予約入れた時にくれぐれも挨拶に来なくていいって断っていたのに」
「いえ、全然大丈夫」
大丈夫だけれど、さっきの会話があまりにもクエスチョンマークだらけで頭の中がまだ混乱している。
混乱しながらも、その後は次から次へと高級食材で調理された味も見た目も一流の料理が運ばれてくるので、舌鼓を打っていた。
「和桜さんは、ずっとあの美術館で働いているの?」
「ずっとではないけれど、今年でちょうど三年目」
「その前はどこか他の場所で?」
「・・・・・・ええ」
その時の話をするのも思い出すことも今はない。
フラッシュバックしそうになり、思わず箸が留まる。