空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
「何者って、またとんでもない聞き方をするんだね。ミステリー小説に出て来る犯人呼ばわりされてるみたいだ」

少しすねた顔をしている醍を見て思わず笑ってしまった。

「ごめんなさい。でも、本当にあなたの正体が全くわからないの。私の知らない世界に住んでるんじゃないかって思うくらい」

「知らない世界?なんだそれ。俺は和桜さんが見ているこの世界にちゃんと存在してるよ」

醍は私をまっすぐ見つめながら真顔で答える。

「何者っていうか、醍さんがどういうお仕事されてるのか知りたいわ」

「仕事?うーん、あんまり言いたくないんだけど、そんなこと言ったらまた犯人呼ばわりされそうだな。まぁ服飾関係のプロデュース的な仕事ってことにしといて」

「服飾関係のプロデュース?すごいじゃない。デザイナーとかそんな感じ?」

「そんな感じ」

彼はそんな話にはまるで興味がなさそうな顔をしてお茶を飲んだ。

自分の仕事について聞かれるのは嫌いなんだろうか。

でもどうりで絵が素人離れしていたはずだ。

服飾関係のデザイナーだとしたら合点がいく。

「だから醍さんも絵を描くのが上手だったのね。このあいだのあなたの絵、すばらしかったからようやくその謎が解けたわ」

「ああ、あのゾウの絵?俺は和桜さんの方が素敵な絵だと思ったけどね」

そう言って彼は頬杖をつき、口角を上げながら私をじっと見つめた。

まるで私を挑発するみたいに。次は自分の番みたいな子供じみた感じがおかしい。

挑発したところで、私は絶対にそれに乗らない自信があったから、私もわざとらしく挑発的な表情でその顔を見つめ返した。

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