空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
窓の外に目をやりながら、自分自身の不甲斐なさに半ばあきらめがついて言った。

「いつまでかくまえばいい?」

「かくまってくれるの?」

「この間たくさんご馳走してもらったし、そのお返しっていうか、そんな感じ。でも落ち着いたらすぐに出ていってね」

「申し訳ない。でも助かるよ、ありがとう」

醍はそう言うと、前を向いたまま微かに微笑んだ。

どうしていつもこうなっちゃうんだろう。

でも、これは醍だからかもしれない。

もう二度と男の人とは関わらないで生きていこうと思っていたのに、男の人を家に上げることになるなんて。

少し前の自分では想像もできないことだった。

とりあえず、私の家に向かうことになり、私が住むマンションの近くにあるコインパーキングに車を停めた。

エレベーターすらついていないこんな小さなマンション。

きっと彼みたいな人にとったら信じられない住まいだろう。

階段を踏みしめながら、私の後ろからゆっくり着いてくる彼を振り返ることすら恥ずかしい気持ちになっていた。

今更、彼に対して何に気が引ける必要があるっていうの?

ちっちゃくて嫌なら出て行けばいいだけの話だわ。

「ここ。三階の305号室」

「うん、よく覚えておくよ」

彼は部屋番号に目を向けて頷いた。

玄関の扉を開け、「どうぞ」と先に通した。

相変わらず狭い玄関。

廊下を抜けた先にリビングダイニングがあり、そのすぐ横にキッチンがあった。

部屋は私の寝る部屋だけの1LDK。


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