空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
目に見えていても見えないこともある。
掴みたくても掴めないものもある。
珠紀と彼のことが合って以来、自分の中で踏み出せない気持ちはそこでひっかかっていた。
長い廊下を渡って庭に降りると、すっかり日は昇り柔らかく明るい日差しが私達を照らす。
「きれいな空だね」
醍は空を見上げて言った。
雲一つない青空が広がっている。
朝早いからか、その青空はまだ少し白んでいて水色に輝いていた。
「俺は、これくらいの水色の空が好き。透明感のある色」
「そうだね」
私も空を見上げてそう感じていた。
この水色は、どこかで見たことがあるような・・・・・・。
とても美しくて、私も好きな色だと思った。
庭園を二人並んで歩く。
誰もいないからか、普段の倍以上もお遅い速度で歩いている。
だけど、その歩調は二人で歩くには丁度いいような気がした。
「オノ・ヨーコさんがね、以前『空の美しさにかなうアートなんてあるのだろうか』って言った記事を読んだんけど、俺も本当にそう思う」
彼は前髪を掻き上げて私を見下ろす。
「空はそこにちゃんと存在しているのに掴めない。掴めないって存在していないことになるはずなのに、でも空はあるんだ。そういう存在ってすごく魅力的だし美しさの原点だと思う。そこにアートを感じるんだよね」
「なんだかわかるようでわからないな」
私は苦笑して彼の顔を見上げた。
醍はそんな私の言葉を受けて、固かった表情がようやく緩んだ。
「わかるようでわからない、まぁ、結局はそういうことなんだけど。『色即是空』って言葉聞いたことある?」
「昔、学生の頃習ったような気がするわ」
目の前に大きな池が見えてきた。
掴みたくても掴めないものもある。
珠紀と彼のことが合って以来、自分の中で踏み出せない気持ちはそこでひっかかっていた。
長い廊下を渡って庭に降りると、すっかり日は昇り柔らかく明るい日差しが私達を照らす。
「きれいな空だね」
醍は空を見上げて言った。
雲一つない青空が広がっている。
朝早いからか、その青空はまだ少し白んでいて水色に輝いていた。
「俺は、これくらいの水色の空が好き。透明感のある色」
「そうだね」
私も空を見上げてそう感じていた。
この水色は、どこかで見たことがあるような・・・・・・。
とても美しくて、私も好きな色だと思った。
庭園を二人並んで歩く。
誰もいないからか、普段の倍以上もお遅い速度で歩いている。
だけど、その歩調は二人で歩くには丁度いいような気がした。
「オノ・ヨーコさんがね、以前『空の美しさにかなうアートなんてあるのだろうか』って言った記事を読んだんけど、俺も本当にそう思う」
彼は前髪を掻き上げて私を見下ろす。
「空はそこにちゃんと存在しているのに掴めない。掴めないって存在していないことになるはずなのに、でも空はあるんだ。そういう存在ってすごく魅力的だし美しさの原点だと思う。そこにアートを感じるんだよね」
「なんだかわかるようでわからないな」
私は苦笑して彼の顔を見上げた。
醍はそんな私の言葉を受けて、固かった表情がようやく緩んだ。
「わかるようでわからない、まぁ、結局はそういうことなんだけど。『色即是空』って言葉聞いたことある?」
「昔、学生の頃習ったような気がするわ」
目の前に大きな池が見えてきた。