空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
首筋に彼の熱い吐息がかかる。

「こっち向いて」

醍はそう言いながら私の体を自分の正面に向けた。

そして、そのまま唇を塞がれる。

彼の体温も唇も熱くて、さっきまでの一人の寂しさはすぐに消えていった。

いつの間にか、こんなにも彼を求めて待っていた自分に以前の自分が重なる。

あの時もそうだったような気がする。

知れば知るほど好きになって、彼を求めていた。

それなのに・・・・・・。

醍の頬を両手で挟み、そっとその唇から離れると言った。

「先食べよう。もうできてるから」

いきなり私が離れて一瞬驚いた顔をしていたけれど、照れくさそうに笑いながら頷く。

私は彼の照れた表情にキュンとしながらも、自分の気持ちを悟られないようすぐに目を逸らしキッチンに急いだ。

体がまだ熱くてドキドキしていた。

こんなにドキドキして、私おかしくなっちゃったのかしら。

まるで。

まるで、すごく好きになっちゃってるみたい。

4歳も年下の彼に。

キッチンで深く深呼吸すると、フライパンに卵を割り入れた。

「あれ?ひょっとしてオムライス?」

彼がキッチンにひょっこり顔を覗かせて尋ねる。

「そうよ」

「俺が好きだって言ってたの覚えてくれてたんだ」

醍は嬉しそうに笑った。

「違うわ。すぐに作れるからよ」

彼に見られてる右側の頬が熱い。

「和桜、顔赤くなってる。かわいい」

「からかわないで」

はぐらかせばはぐらかすほどドキドキが激しくなって顔に血が上っていく。

「もうすぐ出来るからリビングで待ってて」

卵にぷくぷくと気泡が出来はじめているのを見つめながら言った。

「ああ、わかった」

彼はそう言うと、ようやく私のそばを離れリビングのソファーに座った。
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