空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
ひとしきり愛し合った後、彼の胸の上に火照った体を預けたまま尋ねた。
「お父さんにはちゃんと話できた?」
醍は私の髪を優しく撫でながら「うん」と答えた。
「とにかく、自分の納得いく仕事をやって見せてみろってさ。話はそれからだって。全くいつだって偉そうな親父で嫌になるよ」
「だってそれだけの立派な方だもの、しょうがないわ」
私はからかうような視線を送りながら笑った。
醍の父親は、京友禅のトップを誇る『吉丸』の代表だもの。
そんな一流の父を持つ醍のプレッシャーを思うと、笑ってもいられないのかもしれない。
醍がうっすら苦笑する横顔を見つめながら思った。
「でも、話できただけでも一歩前進だね」
「そうだね。とりあえず、全ての準備は整ったから後は製作にかかるだけ」
「製作は結局どこでするの?こないだ、ここから随分遠い場所って言ってたけど」
「・・・・・・ああ、うん」
彼は私の髪を撫でる手をふと止め言葉を濁した。
そんな彼の横顔を不安な気持ちで見つめる。
醍はどこへ向かおうとしているんだろう。
私が考えているよりももっとずっと遠い場所へ行ってしまうんじゃないかって一抹の不安に襲われる。
次に続く言葉を聞きたいようで聞きたくないような。
その時、彼の口もとが僅かに動いた。
「パリ」
「パリ?」
思わず体を起こし聞き返した。
「パリって、フランスのパリ?」
彼は私の目をじっと見つめたまま頷く。
すぐそばに横たわっているはずの醍がその瞬間ものすごく遠くに感じた。
この若さで既に世界に羽ばたこうとしているんだ。
彼がこんな場所に留まっている人じゃないことくらいわかってたはずなのに、パリという言葉が彼の口から出た時、その現実をあらためて自分に突きつけられる。
「お父さんにはちゃんと話できた?」
醍は私の髪を優しく撫でながら「うん」と答えた。
「とにかく、自分の納得いく仕事をやって見せてみろってさ。話はそれからだって。全くいつだって偉そうな親父で嫌になるよ」
「だってそれだけの立派な方だもの、しょうがないわ」
私はからかうような視線を送りながら笑った。
醍の父親は、京友禅のトップを誇る『吉丸』の代表だもの。
そんな一流の父を持つ醍のプレッシャーを思うと、笑ってもいられないのかもしれない。
醍がうっすら苦笑する横顔を見つめながら思った。
「でも、話できただけでも一歩前進だね」
「そうだね。とりあえず、全ての準備は整ったから後は製作にかかるだけ」
「製作は結局どこでするの?こないだ、ここから随分遠い場所って言ってたけど」
「・・・・・・ああ、うん」
彼は私の髪を撫でる手をふと止め言葉を濁した。
そんな彼の横顔を不安な気持ちで見つめる。
醍はどこへ向かおうとしているんだろう。
私が考えているよりももっとずっと遠い場所へ行ってしまうんじゃないかって一抹の不安に襲われる。
次に続く言葉を聞きたいようで聞きたくないような。
その時、彼の口もとが僅かに動いた。
「パリ」
「パリ?」
思わず体を起こし聞き返した。
「パリって、フランスのパリ?」
彼は私の目をじっと見つめたまま頷く。
すぐそばに横たわっているはずの醍がその瞬間ものすごく遠くに感じた。
この若さで既に世界に羽ばたこうとしているんだ。
彼がこんな場所に留まっている人じゃないことくらいわかってたはずなのに、パリという言葉が彼の口から出た時、その現実をあらためて自分に突きつけられる。