空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
11.自信と喪失
11.自信と喪失

醍のパリ行きの準備が忙しくなると同時に私も『無名の芸術家展』の企画立案とその打ち合わせで慌ただしくなっていった。

ある意味、慌ただしい自分の日常は醍とのこれからのあれこれを考えなくてもいいから、今は正直ありがたい。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼も準備で忙しくますます会える時間は減っていった。もちろんそんな日が続くと、合間を縫って電話やメールは頻繁にくれていたけれど。

いよいよまほろば編集部のスタッフとの最終打ち合わせを目前に控え、展示会のコンセプトが決まろうとしていた。

植村さんと必死に練って考えたコンセプトをようやく披露できるのは嬉しかったけれど、その案を受け入れてもらえるまでは武者震いに似た緊張感に包まれていた。

会議のテーブルをセッティングし、企画書を置いた椅子の前に一部ずつ並べていく。

植村さんは、書類を並べる手を止めると部屋の壁時計に目をやり言った。

「いよいよね。丁度一時間後に会議開始。決戦の幕開けだわ」

「決戦なんて大げさですよ」

思わず力んだ表情の植村さんを見つめながら笑った。

「だって、今日みたいな会議初めてだもの。評判も高くてマスコミからも注目浴びるような展示会の企画を発表するなんて」

「うん、確かにそうですよね」

私はそばにあった椅子にストンと腰をかけると、自分の企画書をめくった。
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