先生、死にたいです
当時の事を思い出し、ガバッと起きて辺りを見回す。

とても狭い部屋で牢屋の様だった。
そしてベッドの横にはお母さんが居た。

「姫愛っ!」
お母さんは涙ぐみながら私に抱きついてきた。

「ごめんね…。ごめんね……。こんなに痩せるまで辛かったなんてお母さん失格だね。お父さんが助けてくれなかったら姫愛を死なせてしまう所だった…。」

と言ってお母さんは泣いて私の頭を撫でる。
看護師さんも私が目を覚ました事に気がついたらしく、鍵付きの部屋に入ってきた。

「はじめまして。看護師の飯田です。これから退院するまでお世話しますのでどうかよろしくお願いします。」
と女性の看護師さんが笑顔で話しかけてきた。

時計もなにもない部屋で、あるのはトイレとチェストとベッドだけだった。

チェストの前にはお母さんが着替えを入れた鞄と食べ物や飲み物が置いてあった。

「姫愛。あなたは衰弱して入院する事になったの。お父さんとお母さんと先生で話し合いをして決めたわ。だからお願い、先生や看護師達の言うことをしっかり聞いて。姫愛は心の病気になってしまったのよ…。」



────心の病気?

今、流行りのうつ病ってやつ?
あー……。私死にたいって思ってたもんなー。

まだボーッとしている頭をフル回転させてお母さんの言ってる内容を理解した。

看護師さんが部屋の説明をした。
この部屋は閉鎖空間で先生が良いって言うまで出られないらしい。

とにかくご飯を食べる事だけはしなさいとお母さんと看護師さんがずっと言ってた。

でも私にはそんな気力も精神もなかった。

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