【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
「ただいまー」
実家で飼っているマメシバのハナの散歩を終えたわたしが、玄関の扉を開けるとだし汁のよい匂いが漂ってくる。
わたしの大好きな郷土料理のしっぽくうどんを母が用意してくれているのだということが分かって、ハナを抱っこしたまま台所へ向かった。
実家にあるのは〝キッチン〟ではなく台所だ。
リフォームはしたけれど、やはり小さな頃から使われている道具が未だにあり、懐かしいなと思う。
椅子に立って、母の手伝いをしたことを思い出した。
「すごくいい匂い。向こうじゃいりこ出汁なんてあんまり使わないから、帰ってきたって気がする」
「おおげさよ。できるまでまだ時間があるんだからゆっくりしてなさい」
抱き上げていたハナがバタバタと暴れ出したので、床においてやるとどこかに走って行った。
ハナに振られてしまったわたしは手持ち無沙汰になり母の隣に立つと、準備されていた野菜を切りはじめた。
「で、いったい何があったのよ」
わたしが急に実家に戻ってから、三日目。
母はそれまで何も言わずに、いつもとかわらない態度でいてくれた。
だからそろそろだと思っていた。