【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
「やっぱり、ばれちゃった」

「当り前でしょう。あんたの母親、何年やってると思ってるの?」

「そうだね。お母さんだもんね」

あははと笑ったけれど、気持が晴れるわけではない。

「一日に何度ため息つくのよ。辛気くさいからやめてちょうだい」


「うん……」
ざくざくと大根を短冊切りしながら、生返事をする。

母に心配をかけたくないとは思うものの、相手はおおよそ察しがついているに違いない。

「結婚のこと?」

「あ、うん。お母さん、わたしやっぱりこっちに帰ってこようかな」

それまで隣で鍋の中の様子を見ていた母の手が止まる。

「芽衣子、自分で何言ってるかわかってるの? あんなに嫌がっていたじゃない」

たしかにずっと戻ってこいという母の話を、無視し続けたのはわたしだ。

「これまで実家のことほったらかしだったでしょう。全部弟まかせだったし。そろそろ親孝行しようかな……なんて思って」

笑ってごまかそうとしたけれど、真剣な目の母はそれを許してくれない。

「芽衣子、ちょっとここに座りなさい」
< 104 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop