【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
ダイニングの椅子を指さされ、わたしは素直にそれに従った。
母もわたしの前の椅子に座る。
「芽衣子、結婚のことはお母さんが悪かったわ。あんなふうに焦らせて人生の大切なことを決めるのは間違っていると思う。ごめんなさい」
わたしは慌てて首を振った。
「もともと、わたしが変な意地を張ったのが悪かったの。だから謝らないで」
「そうなの。色々言ってくる奴なんて、放っておけばいいじゃない」
「一番色々言ってたの、誰よ」
「誰だったかしら。もう忘れちゃった」
お茶を淹れてくれた母がわたしに差し出した。
高校生のときまで使っていたものを、未だにこうやって手渡される。
微笑んだ母の瞳には、まだ心配の色が潜んでいた。
あったかい番茶を一口飲んで、話を始めた。
「わたしね、今回は真剣に結婚しようと思って結婚相談所にも登録したの。短い間に何度もお見合いしてね。でも全然いい人に巡り合わなくて」
「東京でもそういうものなの?」
「いいな、と思っても結婚したら仕事を辞めて欲しいとか、そういう人ばっかりで」
わたしは今の仕事を気にいっている。そのために婚活を始めたようなものなのに、本末転倒だ。