【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
「あ~これも好きだった。たしか何回も借りて結局買ってもらったんだったっけ?」

あとは……そうだ、アレまだあるかな?

記憶を頼りに本を探す。さすがに同じ場所にあるとは思わなかったけれど、その近くにあって、うれしくて本を手に取った。

サン=テグジュペリの【星の王子さま】

ボロボロになっていたが、まだあったことに喜んだ。

手に取ってペラペラとめくる。所々読みながら裏表紙にたどり着く。

そこに半分に切った形の封筒が貼り付けられていて、あの頃は図書の貸し出しカードをここに挟んでいたな……なんてことも思い出した。

そうだあの頃、この図書室で小さな男の子とよく一緒に過ごしたな。

最初は自分の借りた本の貸し出しカードに、よく名前があったのが気になったのだ。

ある日たまたま公民館の職員が彼の名前を呼ぶのを聞いて驚いたんだった。

おそらくわたしよりもずっと小さかったのに、同じレベルの本を読んでいた。

「名前……なんて言ってたっけ。えーっとたしか……ケイくんって呼んでいた。たしかミヤモトケイトだったはず……ケイトって」

記憶の中の彼の顔を思い出す。ぼんやりとした記憶がだんだんと鮮明になっていく。

柔らかそうな色素の薄い髪に、形のよい目。それと……笑ったときは天使みたいに可愛かった。

いや、でもあの小さな男の子は無口で、いつもやんちゃな子供達に意地悪をされていた。

何度か目にしてかばったことがある。今のあの明るいケイトとは似ても似つかない。
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