【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました

「そんな……嘘、まさか……」

記憶の中のケイくんが、大人のケイトの顔に重なる。

でもずっと昔のことだ、記憶違いの可能性の方が高い。

自分がそう思いたいから過去の記憶を塗り替えているのかもしれない。

でも、本当にそうだとしたら？

「まさか、ね。名字だって違うし」

馬鹿馬鹿しいことを考えてないでそろそろ戻ろうと思ったとき、背後から声を掛けられた。

「何が『まさか』なんですか？」

その声を聞いた瞬間驚きで固まって、振り向くことも出来なくなってしまった。

なんで？どうして？そんな意味の無い言葉ばかりが脳裏に浮かんでくる。

しかし動揺しきっているわたしをよそに、彼はコツコツと足音を立てて近付いてきた。

そして背後からわたしが持っている本を手に取った。

「【星の王子さま】か、懐かしいですね」

振り向くとケイトが、本をめくっていた。大切なものを慈しむような笑顔を浮かべて。