【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
「皆川さんの結婚式で、芽衣子さんを見つけたときは驚いて話しかけることなんてできなかった。
こっそり芽衣子さんの行きつけのバーを探って、何度か出入りしていたんですよ。俺」
はにかんだ笑みを浮かべた彼は、照れくさそうに髪をかき上げた。
そして窓の外を眺めながら昔の話をしてくれた。
「親の都合でニューヨークに引っ越しをしたんです。
当時芽衣子さんにそれを伝える方法なんてなくて、でも俺の心の中では、あの最低の毎日を明るくしてくれたあなたのことはいつまでたっても特別だったんです」
「わたし、何も特別なことをしたつもりはないの。ただここでケイくんを見つけると一緒に本を読んだりしていただけだもの」
ふたつ年下の弟は、生意気ばかりいって可愛くなかった。
それに比べ〝ケイくん〟はおとなしかったけれど、弟の何倍も賢く話をしても楽しかった。
「それだけじゃないです。当時の俺は色々あってうまく人と関わることができなかった。だから馬鹿な奴らに『気持ち悪い』なんて言われて、それでもだまって耐えるしかなかった。
そんなとき、いつも何食わぬ顔して、俺の手を引いて連れ出してくれた」
彼は両手を組み時折人差し指を動かしながら、なつかしそうに、そして少しさみしそうに自らの過去を語った。